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【小論】若者の離職率

 大学を卒業し、3年以内に離職してしまう若者の割合は、およそ3割である。試験や面接を経てやっと就職したのに、3割の人が離職してしまうというのは、決して少ない数字ではなく問題であろう。
 高い離職率の背景には、国内だけでなく海外の会社とも競争に晒され、安売り競争が激化し、余裕のなくなった企業の実態、その結果、社員育成に十分な指導を行う余裕がない一方で、競争に勝つため新入社員に多くを求めてしまうこと、等があげられるだろう。また、最近の若者は…という(平安時代からあるような)論評で、若者の忍耐力の欠如を指摘する声もあろう。
 これ以外にも無数の要因が考えられるだろうが、その一つに、物質的な豊かさと選択の自由を勝ち得た現代人の当然な結果、というものが挙げられるかもしれない。近年では雇用形態も多様化し、その仕事を辞めたら生きていけないという状況はなくなった。また、経済面でも極端に困窮する世帯の割合は減少し、多くの若者が比較的余裕をもった生活を送ってこられている。さらに、学校や習い事、余暇の過ごし方、など全ての分野において、選択の幅は広がった上、それを自由に選びとり取捨することもできている。この豊かさと自由に慣れ親しんだきた若者たちは、就職して初めて余裕の無さと自由の制限に直面し、混乱・絶望するのである。加えて、就職した先が数十回にも及ぶ面接を終えてやっと通った会社であるような場合、その会社に大した思い入れはないだろう。その結果、離職を妨げる存在はなく、従来謳歌してきた「自由な選択」を、離職という形で行使するのだ。
 豊かさと選択の広がりも大いに結構だが、経済的な幸せを考えると、やはり仕事を続けることは必要になってくるであろう。豊かさ・自由を制限する、皆が希望の職に就くことは現実的ではない。ならば、選択の制限に遭遇してもある程度の覚悟が予めできると良い。近年指摘されている大学での勉強機会の確保も考慮に入れ、四年間大学で十分に勉強した後、その後数年間を就活や長期職業体験の時間にあて、それから就職できるような制度の構築が望まれる。